あなたと私と嘘と愛

ちゃんと夫婦なんだから、こんなの当たり前なのに。
2人の姿が直視できない。


変なの。
お酒をお代わりして気をまぎらわせようと一気にグラスの中を飲み干すと、優斗の視線が何故か私の方へ。


「亜香里もペース早いんじゃない?もう顔真っ赤になってるけど」


少し呆れたような顔でふわり私の顔を覗き込む。
思わぬ至近距離にドキッと固まったけど、すぐに可愛くない台詞を吐いた。


「べ、つにこれぐらい普通だよ。私がどんなペースで飲もうか勝手だもん」


半分以上照れ隠しだった。
「亜香里…」となんの躊躇いもなく呼ばれたことに今までにないぐらい意識した。
だから咄嗟に顔をそらしたけど、自分でも不思議なぐらい高揚してる。


「もーう、優斗は本当に心配性なんだから、昨日の夜だって散々ボトルあけたんでしょ?今更よ」


こんなことは初めてだ。
今までだってちょこちょこ名前で呼ばれることなんてあったのに。

母が「ねー亜香里」と同意を求めてきたので、私も「本当だよ」とそっけなく言う。

変なの変なの。

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