あなたと私と嘘と愛
抱きすくめられた瞬間心臓が打ちのめされる。ひどく悲しい声だ。切なさと苦しさが交じり合っている。
「亜香里と離れたくない」
「ゆ…と?」
また体が雨に濡れていく。優斗の肩にも幾つか水滴が濡れていくのが見えたけど、それを配慮する余裕はない。
「…なっ、優斗…?ショックで可笑しくなっちゃった?」
抱き締められているなんて、何かの間違いだろうか?
状況が掴めず動揺する私に優斗の熱く真剣な声は続く。
「違う、俺はただ亜香里と…。亜香里だってさっき俺を大事にするって言ってくれただろ」
「…や、それは…っ、えっとあれは家族として。そう!家族としての意味合いでっ」
やっぱり聞かれてた。
母との会話のことだと気付いた私はカァ~と顔が熱くなる。
「だから深い意味はなくてっ。ほ、ほら、優斗だってそうでしょ?私と家族として離れるのが嫌ってことで…」
真に受けちゃダメ。真に受けちゃダメだ。都合のいい解釈なんだと必死で理性を保つのに、
「亜香里」
熱のこもった強い声。
その強い響きに心が揺れる。
「…もう、いい。そういうのはやめよう。嘘は付きたくない。自分を誤魔化すのはもうやめよう」