あなたと私と嘘と愛
だから愛情を込めてじっくりコトコトと…。美味しく出きるといいな。なんて思いながらシチューを煮込みながらサラダも作る。
ちょうどプチトマトを洗っていたら、そこでようやく扉が開き優斗が顔を出した。
「お、いいにおいがする」
ドクンと心臓が跳ねる。
顔を見た瞬間なんか急に緊張というか、動揺してしまった。
だって昼間のこともあるし、あれから1度も話してないんだもん。
「ごめん、仕事に熱中してて時間をまったく気にしてなかった。もうこんな時間か」
「ううん、大丈夫…」
冷静に返したものの、視線はプチトマトへ向けたまま。顔が見れて嬉しいような、恥ずかしいような…、ドキドキする。
「俺も手伝うよ。他にやることある?」
優斗が腕を捲り近づいてくる。やっぱり落ち着かない。
だからつい素っ気なく断りを入れてしまった。
「いや、いい。私1人で大丈夫だから。優斗はテレビでも見ててよ」
だってどんな顔して話したらいいか分からないんだもん。
プチトマトを1つ1つザルに入れると、優斗の足がピタリと止まる。
「…亜香里?」
不思議そうな声だったけど、やっぱり優斗の方を見ずに言った。