あなたと私と嘘と愛

「ふっ、そうですね。これはしいていうなら仕返し、ですかね?」
「…は?」
「今まで二人に散々振り回されてきた俺なりの仕返しですよ」

にやりと口の端を上げた優斗。
ふてぶてしい態度になったと思ったら悪びれもなく私を見たあと母の方へと視線を向けた。

「俺にはその権利が十分とあると思うので」

「なっ…」

「恨むんなら今までの自分達の行動を反省してください。俺だってプライドぐらいあります。やられっぱなしじゃ終われないですよ」

唖然という言葉しか浮かばない。
その清々しい物言いを聞いて私は目の前の優斗を改めて引きつった顔で直視する。なのにとても爽やかな笑顔を向けられた。

「本当あなた達二人は似た者同士だ。天の邪鬼で強がりでどこかひねくれてる。おまけに強情だし」

悪戯に目を細めた優斗に頭をポンポンと撫でられる。嫌味を放つ口調とは裏腹に見つめてくる瞳はとても優しい。

「…ゆうと…」
「俺の意見なんて聞きやしない」

あー…
耳が痛い。
昔の自分を思い出し、あちゃ…と頭を抱えたくなる。

「正直振り回されて身が持ちませんよ。…けどまぁ、そこがまた可愛いんですけどね。一生懸命で不器用で、いつも必死な姿に寄り添いたくなるのも事実で、そこが魅力でもある、かな」

ふっと微笑まれ、思わず赤くなる。
ディスられてるのか誉められてるのか分からない状況なのにどこかホッとする。
優斗の台詞は私達親子を黙らせるのに十分な威力を放つ。

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