あなたと私と嘘と愛
「そもそも俺のこと本気で好きなんですか?」
ずっと前から気になっていた。
それが一番引っ掛かる要因で、ずっと謎なとこ。
「それはノーね。人としては好きだけど」
ほらな。やっぱり思った通り。彼女の本音にホッとすると共に矛盾が生まれる。
「あ、けど顔はけっこう好きよ?」
「尚更あり得ないですね」
俺だってそうだ。恋愛感情はないに等しい。悠里さんとは20才以上年が離れてて、その娘の方が年が近いってことすら受け入れられない。
「ふふ、そうね。そうなのよ。けどそれでもあなたにお願いしたいって言ったら?私にも譲れない思いがあるの。もう決めたことだから…」
「決めたって…」
「女の勘ってやつかしら?好きとか嫌いとか関係なしにあなたには何か響くものがあるのよ。普通の人とは違う特別なものを感じてる。きっと娘とも気が合うんじゃないかって思うから」
どんな感覚だよ…、と突っ込みながらあからさまに嫌な顔を向ける。
やっぱりこの人とは分かり合えない。そう思った矢先、急に悠里さんの顔色が悪くなる。
「あなたになら一人娘を託せられるって。私がいなくなった後のことをお願いできそうな気が…して。私のことを好きにならないからこそ、私は…あなたが…っ」
「…は?」
「…契約、を…結び…」
「…え?」
「…つ…っ…」
ガタッとグラスがテーブルから転がり落ちる。
「ゆう、と、ごめ…お水を…っ」