あなたと私と嘘と愛
彼女はやっぱり彼女で、何を考えてるのか分からない。
元気そうなのは安心したが、どこか腑に落ちない感情に気付く。
(いったい何なんだ…)
彼女は俺をどうしたいのかと理解に苦しむ。
心変わりしたのならそれでいいのだけど、それなら一言ぐらいあってもいいんじゃないかとやっぱり腑に落ちない感情に支配される。
撮影の進み具合も拝見し、監督にも挨拶を済ませて帰ろうとした時、背後から可愛らしい声に呼び止められる。
「上條さん」
パタパタと小走りの可愛らしい足音だ。
「あの、お疲れ様です」
「お疲れ様です」
ふんわりとしたショートボブが似合う女の子。視界に入ってきたのは現在人気上昇中の若手女優だった。
確か彼女は主人公の娘役を任されてるはず。
「あの、今日来てたんですね。会えて良かったです!ちょうど演技のことで聞きたいなって事があって」
「…演技ですか?」
それなら俺よりも監督や演出、他の俳優陣の方が適任では?一瞬疑問に思いながも当たり障りのない笑顔を向ける。
「どんなことで?」
「えっと…、今演じてる英里奈の役柄なんですけど、少し分からない事がありまして、その、良かったらこれからお食事を交えながら教えて頂けませんか?」
「……」
「あ、その、時間があればでいいんですけど…」