あなたと私と嘘と愛
二人は恋人同士の役柄なため、常に絡むことも多いだろう。
「雫ちゃん、この後予定ある?一緒にご飯行かない?」
「えっ、この後ですか?」
「そうそう演技の相談もしたいし」
随分軽いノリはこの俳優の売りだ。喋りも上手く、陽気なキャラはいわゆるちゃらんぽらん。
実力は素人の俺から見てもそれなりで、やたら強気の態度でやって来れるのは父親の影響が大なわけで。むしろ2世を盾にして生きている。
「…あの、ごめんなさい。実は先に上条さんをお誘いしてて…」
「は、なに?またかよー」
遠慮がちに謝る彼女とは正反対に不満を露にするちゃらんぽらんこと貴也くんは落胆した後、苛立ちの矛先を俺に変える。
「なんなんだよ、あんたさ、毎回邪魔しないでくんない?」
「いや、邪魔してるつもりは…」
女の嫉妬も面倒だか、男の嫉妬もなかなかだと思う。
とくにこういうタイプは自分を過大評価しているため、人の意見を素直に聞かない。
「そもそもあんたは何しに此処にいんの?脚本家は大人しく家にこもって仕事してなよ」
「…まぁ…」
確かにその通りだ。
本当だったらそうしてた。俺もちょうど自分自信で反省してたところだが。
「あれだろー?あんた顔だけの脚本家だろ?」
バサリと鋭利な刃を向けられる。