あなたと私と嘘と愛

「知ってるー?雫ちゃん、この前雑誌で見たんだけどさ、こいつの生い立ちってけっこうヤバイよ?いわゆる家なき子ってやつ?得体のしれない過去を色々背負ってるみたいよ」

「えっ?」

この発言を聞いた彼女は俺と貴也くんを交互に見始めるが、俺の表情は次第に真顔になっていく。

「正直なに考えてるのか分かんねぇから、あまり近付かない方がいいよ。バックにヤバイ奴が付いてるかもしれないし」

「あ、え、でも…」

久しぶりに見たな。いつまでたっても成長しないタイプ。中身が子供のまま外見だけ大人になったような人種。
こんな理不尽な言われようは昔から多々あった為、特に反論する気はないが対応にはそれなりに悩む。

「正直こいつの脚本読んだけどたいして面白くねーし、顔がいいってだけでちやほやされて特だよなー」

「貴也くんっ!」

「それは…貴重な意見をありがとうございます。俺もまだ駆け出し中なもので。次の作品はもっと万人受けして貰えるように配慮します」

別にこんな奴に認めて貰おうとか思ってはないが、ここは穏便に済ませて早く立ち去りたいため作り笑顔を見せる。

「まじうぜー」

悪態をつかれ、俺だっていい気分はしない。それなりに苛立ちを感じるわけで。
こちらも目障りでしかないため、さっさと終わらせて帰ろうと思ったのだけど、背後から予期せぬ声が向けられる。

< 452 / 471 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop