あなたと私と嘘と愛
「うざいのはあなたの方でしょ」
カツカツカツとヒールの音が気高く響く。
突如背後から顔を出したのは上品でフローラルの艶やかな香り。
「さっきからやんやん煩いと思ったら、大根役者の牧野貴也君じゃない」
……え?
「ゆ、悠里さん!」
その姿を見て驚いたのは皆同じ。
特に貴也くんは悠里さんを見るなり急に腰が低くなる。
「お、お疲れ様です!」
「お疲れ様」
なんというか、分かりやすい。
見るからに顔がひきつっている。
「今の話し声私の方まで聞こえてきたわよ?あなた声が煩いのよ、無駄にでかければいいってもんじゃないでしょう」
「す、すみません…」
急に改まった態度になった貴也くんの態度の変わりよう。それぐらい彼女の登場で空気感が変わったのは明らか。ビシッと背を伸ばした彼は若干怯えるように悠里さんを見る。