あなたと私と嘘と愛
「あなた、この作品好きじゃないのね」
「…い、いえっ!」
「私はけっこう好きよ。この作品の良さが分からないなんて、あなたもまだまだお子ちゃまね。嫌々やってるなら別に降りて貰ってもいいのよ?」
「……えっ?」
「あなたレベルの代わりなんていくらでもいるんだから」
冷たく言いきる悠里さんのしとやかな圧力は聞いていてドキッとさせられる。
直接言われてない俺でもそうなのだから、貴也くんはさぞゾッとしていることだろう。
「人のことを悪く言う前に自分のことをもっと気にしたらどう?」
「えっ…」
「あなたネットの口コミ見てないの?演技が評判になってるわよ?台詞も演技も下手すぎてむしろ大根以下だって。ひょろひょろの切り干し大根ぐらいの器だって」
……ふっ。
これには冷静な俺も思わず吹き出しそうになった。
隣の雫ちゃんも笑いがばれないように下を向く。
「自分の演技もまともにできない人が他人を非難する資格はないわ」
ピシャリと悠里さんの一撃が増す。
「そもそも自分の与えられた作品を見下しながら演じるなんてもってのほか。どんなに望んで頑張っても役を貰えない人がどれだけいると思ってるの?例え小さくて見向きもされない脇役だとしても真剣に向き合えばちゃんとした結果や実力がついてくるものよ。
それができない人に明るい未来はないわ」
確かに…と、引き込まれる言葉に俺は悠里さんの方へと視線を向ける。
それは隣の雫ちゃんも同じようで、ただ青ざめた顔を向けるのは集中攻撃にあってる貴也くん一人。