月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「クソッ!」

そう呟いた黒づくめの男の一人が、私を網の中から連れ出した。

「どこに連れて行くのよ‼」

叫んだ時には、私の首には再び短剣が。

「ジャラール王子!これを見ろ!」

敵の一人を倒したジャラールさんが、振り向く。


「クレハ……」

「刀を下ろせ!」

黒づくめの男が怒鳴る。

「ジャラール様!」

戦っているハーキムさんも、この状況を把握したらしい。


「どうした!この女が死んでもいいのか!」

私の背中に嫌な汗が出る。

私を掴む腕の力が強くなる。

「ジャラールさん……」

助けてと言えない。

まだジャラールさんの近くには、何人か黒づくめの男達がいる。

刀を離した途端、その男達にやられてしまうかもしれない。


その時、ハーキムさんから貰った短剣がある事を、思い出した。

苦しい中、腰の辺りを探す。


あった!


私は思いっきり短剣を振り上げ、そのまま黒づくめの男の腹に振り下ろした。
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