月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「ギャアア!」

黒づくめの男の腕が離れた瞬間、誰もいない場所に向かって走った。

「この女!」

「危ない!クレハ!」

後ろを振り返った途端、短剣が刺さったままの男が、私に向かって刀を振り上げている。


殺される!


恐ろしくてぎゅっと目を閉じた。

しばらくして、ドサッと言う音がする。


あれ?

私、痛くないよ。

何が起こったのか、そっと目を開けた。


「ジャラールさん……」

私の前には、ジャラールさんがいて、私を殺そうとしていた人を倒してくれていた。

「大丈夫か?クレハ。」

「は、はい。」

「怖い思いをさせた。」


優しい笑顔。

それだけで、怖い思いなんて吹き飛んでしまう。


「ジャラール様。お怪我はございませんでしたか?」

「ああ。ハーキムは?」

「私は無事です。」

「それはよかった。」

二人とも、刀を鞘に納める。


「早く宝石を手に入れよう。」
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