月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
そう言うと、ジャラールさんは私に背中を向け、離れた場所にいる、駱駝へ歩いて行く。


私の方に、向いてくれたと思ったのにな……

ああ、そうか。

これが今までジャラールさんの側にいた、女の人達の気持ちなんだ……


心なしか下を向いてしまった私に、ハーキムさんが肩をポンっと叩く。

「我々も行こう。」

「……はい。」

私とハーキムさんは、 ジャラールさんを追った。


駱駝に戻った私は、大事な事を思い出した。

「あっ!ハーキムさんの短剣!」

敵に刺したままだ。

「気にするな。」

ハーキムさんが、私をラクダに乗せる。

「でも……!」

「取りに行くと言うのか?わざわざ?」

ハーキムさんは、飽きれ顔だ。

「相手の男が、最後の力を振り絞って、襲ってきたらどうするんだ。」

「えっ‼そんな事あるの!?」

「俺は何度もある。人間とはそんなモノだ。」


ハーキムさんは駱駝に乗って、私を乗せて後、ゆっくり走り始めた。
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