月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「近づくな。好きになるな。辛い思いをするだけだといっても心を奪われてしまう。仕方がない。それが恋と言うものだ。」

淡々と恋を語るハーキムさんに、違和感を感じないのはどうしてだろう。

「前にも聞いた気がするんですけど……ハーキムさんって、恋人いるの?」

「一応な。」

「一応って……好きで付き合っているんじゃないの?」

「そんな感情を、持つ暇などない。」


そんな感情って。

さっきまでそんな感情の事を、語っていたでしょうに。


「どんな方なんですか?」

「ネシャート様のお付きの者だ。」

「へえ〜。同じ立場同士で付き合うって素敵。」

「そうか?ネシャート様がお決めになったのだ。断るわけにもいかないだろう。」


上司に言われたから、断れなくて付き合うって。

何?それ。


「何か……可哀想。」

「何がだ。肝心なのは相手を大切にするかだろう。恋愛感情を持ったとて、報われなかったらその方が辛い。」
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