月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
するとジャラールさんは、脱いだ服を私に差し出す。

「クレハ、持っていてくれ。」

「は、はい!」

カチコチになりながら、なんとかジャラールさんの服を受けとる。

するとジャラールさんは、早足で湖に行き、中へ飛び込んだ。

しばらく湖面に、ジャラールさんの吐いた息の泡が見えたけれど、それも次第に無くなっていく。


「ジャラールさん、大丈夫かな。」

「大丈夫さ。」

「それにしてもこの湖、結構深いの?」

ハーキムさんは、湖を見ながらじっと待っている。

「深くはない。私も潜った事があるが、すぐ底が見えるくらい浅かった。」

「えっ?」

「恐らく言い伝えは本当だったんだ。妖精の住む場所は、太陽の光りが届かない程深くにあり、妖精に愛された一族にしか見えないものだと。」


私は湖の側に行った。

ジャラールさんには、その妖精が住む場所が見えているのかな。

湖の中を見ると、深いエメラルドグリーンが広がる。
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