月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「ああ……」

思い詰めた表情で、ジャラールさんは、駱駝が繋がっている木までやってきた。

「ジャラールさん!お帰りなさい‼」

私が言っても、頷くだけ。

なんか変だ。

「ジャラールさん?」


おかしく思ったハーキムさんは、ジャラールさんの隣に行く。

「ジャラール様。宝石はどこに。」

だけどジャラールさんは、何も言わない。

「ジャラール様……」

疲れた顔をしたジャラールさんは、ハーキムさんにこう言った。

「ハーキム。宝石はなかった……」

「宝石がない!?」

ジャラールさんはそう言うと、その場に倒れこんでしまった。


「言い伝え通り、湖の底には妖精の住む場所があった。招き入れられた中は、別世界のように美しくて。一番奥にある宮殿に現れた女神は、俺が着くなりこう言った。"もうお前達一族が来る場所ではない。宝石はここにはない。"と。」

「どういう事なんですか……」
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