月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「一番最後は確か……宝石が見つかったところって言ってたよね。」

「うん。」

光清があるページで、手を止めた。


「ここだ。」

光清はそのページを、私に見せてくれた。

「本では、ハーキムと言う人物が、その宝石を隠し持っていたとされている。」

「えっ?」

私は、その本を手に持つと前後のページも捲って見た。


「ハーキムさんが!?」

そして思い知らされる。

そこには、私が存在していない事を。

「私がいない。」


あんなに二人と話したり、助け合ったり、胸が苦しくなったりした事が、実際ここではなかった事にされている。

悲しい。

所詮ここでの私の存在は、何だったんだろう。


「この後、二人はハーキムって人が持っていた宝石を持って宮殿に帰ったとされている。」


確かジャラールさんが、時間がかかるけれども付いてきてほしいと言ってたって。

でもそれも、私のいない間に、簡単に進んでいたなんて。
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