月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
その時のハーキムさんのニヤリとした笑顔が、旅の時みたいでほっとしてしまった。

「よかった。クレハが元気になってくれて。」

「はは……」

「帰ってくる途中のクレハは、まるで魂が抜けたように眠っていたからな。」


ハーキムさんの言葉を聞いて、体がドクンと脈打つ。

「眠っていた?私が?」

「ああ。」

この世界にいる時は、現実の世界では眠っていて、現実の世界にいる時、ここでは眠っている。

そうやって、私は現実とこの世界を行き来しているんだ。


それが本当なら、もしかしたらもしかしたら……

現実の世界で朝が来れば、この世界にいられなくなる。


「ハーキムさん。」

「ん?」

「ジャラールさんの側近は、どれくらいいるの?」

「どれくらいって……俺を入れて数人しかいないが?」


それじゃあ、入れ代わってもバレるかな。

時間がないのに。

どうしても、ジャラールさんに会わなければいけないのに。
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