月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
あのジャラールさんが、扇情的な眼差しで、私の顔を覗く。

「寝せないでって……」

途中まで言って、ジャラールさんの唇が、だんだん近づいてくる。

「違う!私、寝ると現実の世界に戻ってしまうの!」

もう少しで唇が重なると言うところで、ジャラールさんは止まった。


「現実の世界に戻る?」

私はゴクンと息を飲むと、ジャラールさんにここに来た経緯を話した。

「……今回のジャラールさん達の旅の話、私の世界では一冊の本になっていたの。」

「本?」

「私の学校の図書室に置いてあった。ジャラールさん達の言葉で書かれていて、私は読めなかったけれど。」

ジャラールさんは、うまく状況が飲み込めず、ポカンとしている。

「私は、現実の世界で眠っている時に、こっちの世界へ。こっちで寝ている時には、現実の世界にいるの。」

「えっ?……」

そりゃあ、そんな事言われたって、すぐに信じられないよね。
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