月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
なかなか答えようとしない私に、ジャラールさんは小さい声で尋ねてきた。

「……俺にとっては、不幸な結末のお話しなのかな。」

ううんと、首を横に振った。

ネシャートさんは、直接的ではなかったにしろ、あの宝石を持ってきた事で、病が回復しジャラールさんとハッピーエンドに終わる。

決して二人は、不幸じゃない。


「ならば、他の登場人物が不幸になるのか?」

そして私はまた、首を横に振る。

少なくてもハーキムさんやネシャートさんが、死んだり不幸になるような事も書いていなかった。


「だとしたらクレハ。遠慮せず教えてくれ。」

「ジャラールさん……」

「俺なら大丈夫。大抵の事なら、驚かないよ。」

無理に笑ったジャラールさんが、私の胸を尚一層詰まらせる。


本当の父親は、母を強奪した人であり。

その母親は失意の内に亡くなって。

一番に愛した人は、血を分けた兄妹。

どうしてこの人には、過酷な運命ばかり訪れるんだろう。
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