月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「何はともあれ、無事に戻ってきたんだ。よかったじゃないか。」

光清が立ち上がる。

「もう出発の時間だよ。二人供、準備して。」

「あいよ。」

ときわが返事した後、光清は部屋を出て行った。


「そっか……出発の時間に間に合ったんだ。」

私がほっとしていると、ときわが私の背中を叩いた。

「痛いっ!」

「紅葉。後で光清にお礼言うんだよ。」

「なに、急に。」

「光清。紅葉がいつ起きてもいいように、一晩中起きててくれたんだよ。」

叩かれた背中に手を伸ばそうとして、途中で止めた。

「光清が?」

「そう。もし紅葉が、普通の状態で帰って来なくても、その時は俺がずっと、紅葉の面倒見るって。」


光清。

胸が苦しい。

ジャラールさんに感じた、胸の痛みとは違う。


そして一方、ときわの目はキラキラ輝いている。

「何考えてんの?ときわ。」

「別に~。さあ、私達も支度して行こう。」
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