月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
すると光清は、反対の通路側を見て、ため息をついた。

「ときわだな。教えたの。」

「まあ、そうだけど。有り難う。」

「あ、ああ……」

光清のこの様子を見ると、本当は知られたくなかったんじゃないの?

私は席の隙間から、ときわを見た。

見えないけれど、ときわの頭がこっちを向いているような気がする。

案の定、光清がときわと目を合わせて、じーっと睨みをきかせていた。


そこへ神崎部長が、バスに乗り込んだ。

「皆さん、揃ってますか?」

は~いと言う返事と供に、バスガイドさんが朝の挨拶をする。

ゆっくりとバスが動き、社員旅行は最終日を迎えた。

「これからバスは、東寺に向かって参ります。」

ああ、そうか。

もう一ヶ所、巡るんだ。

なんだか、もう終わった感じがするんだけどな。


「どうだった?砂漠の旅は。」

ふいに、光清が尋ねてきた。

「まあまあだったよ。」
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