月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「まあまあ?イケメンの王子様と一緒で?」

「はははっ!そっちはそっちで楽しかったけれど、他にも大変な事がいっぱいあってさ。」

「へえ~どんな事?」

「うんとね……」

窓の向こうに、ジャラールさん達との思い出が写る。

「ごめん、光清。また、今度でもいい?」

「紅葉……?」

「今話したら、たぶん旅行どころじゃなくなるかも。」

窓が曇って見える。

頬を伝う涙で、ああ、私が泣いているからだと分かった。

「うん、いいよ。紅葉が話したい時に話して。俺、逃げないし。」

「うん、有り難う。」

「その代わり、今だけは砂漠の旅を忘れて、現実の旅に没頭しない?」

「ぷっ!」

その言い方が、安いナンパみたいに聞こえて、なんだか笑ってしまった。

「真面目に言ったのに、笑ってるし。」

「ごめんごめん。だって、ナンパみたいに聞こえたんだもん。」

「失礼だな。」

そうして私達一行は、東寺へと進んで行った。
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