月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
東寺は京都駅に、近い場所にある。

新幹線で来たから、お土産を買っても間に合うように、設定されたんだろう。

「東寺、思ったよりも広いなあ。」

「そうだね。」

自然に光清と歩く東寺は、ここが日本だという事を、私に教えてくれた。

「紅葉。たぶん俺、帰りの新幹線で寝てしまうと思うから、今言っておくけど、」

「なあに?」

「紅葉だからこそ、砂漠の国に呼ばれたんだと思う。」

光清がその言葉を口にした時、どこからか心地よい風が、サーっと横切った。

「私、だから?」

「うん。」

笑うでもなく、はにかむでもなく、真っ直ぐに私を見つめる光清が、そこにいた。

「どうして?」

「こんな事言うのもなんだと思うけど、俺、紅葉が寝ている時に、持っていた緑のペンダント、持って寝てみたんだ。」

「えっ?」

急に胸騒ぎに襲われる。

そう言えば今、緑のペンダントって……
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