大天使に聖なる口づけを
歩いたあとに金の光が残るかのように、輝きを放つ美しい髪。
その煌きに負けないくらいのあでやかな笑顔。
大きく口を開けて白い歯をのぞかせて、屈託なく笑う王子は、口うるさい年長者たちに言わせると、『王族らしくない』のかもしれないが、親しみやすいということで、若い者の間では絶大な人気だった。

(ああ、本当にフェルナンド王子って素敵だなー)
何気なく出てしまった本音に、エミリアは自分で赤面する。

(なにこれ……これじゃ本当に、ディオやフィオナが言うように、私が王子に恋してるみたいじゃない……!)
ぶんぶんと首を横に振りながら、邪念を払って警備に専念しようとしても、視線のほうは勝手にゆるゆると王子の華麗な姿に引き寄せられていく。

あまりにもじっと見つめていたからだろうか、エミリアがその異変に気がついたのは、王子の傍近くに控えていた騎士たちよりも、王子自身よりも早かった。
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