あの夏に見たあの町で



案内されたテーブルに座ると、専務はウェイターが持ってきたメニュー表を私の手が受け取る前に全て取り上げ、勝手に注文した






メニューくらい見せてくれてもいいのに...




恨めしく専務を見ていると目が合い、専務がフッと笑う




「コースメニューはどれも同じで金額によって品数が違うから、一番長く君と一緒に食事を楽しめるコースにしたよ、ありす」




ニッコリという表現が似合う笑顔を見せ聞いてて恥ずかしくなるような言葉を吐く




傍から見ればラブラブバカップルだけど、その真意は『視察なんだからオーダーにお前の意見は通らない。長いコースでじっくりスタッフの動き見とけよ』だ





食事の間、車の中でのように全く会話がないのも不自然だし、かと言って専務と話せることなんて仕事の話くらいしかない




“ここの視察は元々予定していたんですか?”




フランス語でなら仕事の話でもできるかな?とフランス語で尋ねてみた




“ああ、先週末にプライベートで利用した経理部のやつが昨日デスクで愚痴ってたのが聞こえたから真相の確認だな。事実であれば担当から改善指導の必要がある”




突然投げられたフランス語の質問にも余裕の表情で答えられる




この男の脳みそはどうなってんだ...






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