あの夏に見たあの町で


会場に入る手前で人事部の社員から控え室にいてくださいと別の部屋に通された





控え室に置いてあった出席者リストに目を通す




来賓欄にどこぞのご令嬢の名前を見つけ、思わず舌打ちをする




とはいえ、社内の欄に彼女の名前も見つけ、少しでも接触できればと僅かな期待も持った







お時間ですと迎えに来た社員に連れられて、会場の裏手のスタッフ用のドアから会場内へ入り、演壇の脇のパーテンションで目隠しをされた所でジジイの話が終わるのを待つ





大きな拍手と共にジジイが下りてきて、進行役が俺の紹介を始めた




悠貴をその場に残し、壇上へ登る





すぐに会場後方の扉近くにいた彼女を見付けた





こちらを見る彼女と目を合わせ微笑み挨拶を始める









彼女は顔面蒼白で震え出した体を抑え、近くの扉から会場の外へと出ていった






面白くなかった




3年経った今でも新を引き摺っているのは明白だった






湧き上がる拍手の中、壇上から下りて悠貴に「すまん、ちょっと繋いで」と時間稼ぎを頼む





入ってきた扉から出ると、よろよろと血色の悪い顔でお手洗いに入っていく彼女を見付けた







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