滴る鼓動、振り向く夏の日、恋の予感。


「個人面談だって。期末テストの結果を見ながら、ひとりひとり呼び出して、夏休みの間に三者面談」
「あー。あったな。てか先生、吉野? さっき電話してたけど長くなりそうだってお茶を貰ってたよ」
「ええー。人を暑い進路指導室に待たせておいて、自分は涼しい職員室でお茶? 信じられないっ」
「だから冷房ぐらいつけてもいいって。怒られねえよ」

 先輩は確かに慣れた手つきで冷房のスイッチをおしていた。

内申書に怯える私たちにはできない大胆な行動だった。

「で、お前、ちゃんと俺の通う東高校に来るんだろうな」
「いた。横腹ツンツンやめてくださいよ」
「もしかして、他の女子みたいに可愛い制服の南高だの、駅に近くてバイトの許可もとれる不良ばっかの西高校に行きたいとかいうなよ」
「……言いませんよ」

私は、男の人魚の速さの虜なんですから。
当然、唯一水泳部がある東高校に行くに決まっている。

「分かってる。お前は誰よりも真剣に練習してたし。掃除だって準備だって一番率先してたし。筋トレも、今の俺みたいにサボらず真面目にしてたよな」
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