幼なじみとナイショの恋。






「結衣」


「お母さん……」



ヒールの踵を打ち鳴らし、昇降口で待つ私のところに向かってくるお母さんは、仕事に行く時と同じ、フォーマルなスーツをピシッと着こなしていた。


どこからどう見ても、バリバリのキャリアウーマンといった感じで、校外でお母さんを見た人は、まさか子供の三者面談に行く母親だとは誰も思わないだろう。


あまりにも“できる女”の雰囲気が漂っていて、こんな内気で地味な私が娘で申し訳なくなるくらいだ。


昇降口から入り、教室がある二階までの階段を上がる。


「校内も全然変わっていないわね……」


その途中。お母さんが懐かしそうに辺りを見回しながらそう呟いた。


実は昔、お母さんもこの高校に通っていたらしい。


私がこの高校に進学したいと伝えた時、お母さんがそう話してくれた。


お母さんは、あまり高校時代のことを話したがらないけど、お母さんにもそんな時代があったんだなって思うと、ちょっと不思議だ。


この廊下をこの階段を、お母さんが私と同じ制服を着て歩いていたんだなって。



お母さんは、どんな高校生だったんだろう?


きっと頭が良くて、美人で、何でも積極的にこなす、非の打ち所がない生徒だったんだろう。


私とは大違いだったんだろうな……。
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