幼なじみとナイショの恋。
それより何より今は、もうはるくんの側にはいられないのだというこの現実が、何よりも辛くて苦しい。


はるくんの手を離したあの瞬間から、まるで水の中にいるみたいに息ができない。


窒息してしまいそうなのに、もがく気力すら出てこない。


情けないな……。


いつかはるくんの側にいられなくなる日がくることを、覚悟してきたつもりだったのに……。


私は、とっくにはるくんがいなくては生きていけなくなっていたんだ。



「しゃんとしてちょうだい。そうなりたいのはこっちの方なんだから」


「……ごめんなさい……」



私の様子が気に障ったのか、お母さんは煩わしそうにそう言葉を吐き捨てる。


だけど、それすら何も感じない。



「あなた、夏休みに入ったら夏期講習に行きなさい。それから、家庭教師もつけたから、これからは勉強に専念しなさい」


「………」


「わかったわね?」



お母さんは、これが最後のチャンスと言いたいのだろう。


今度こそ本当にはるくんを切り捨て、お母さんの言う通りにすれば、今回のことにも目を瞑る……と。


“よかった”とほっとすべきところなのだろうか?


私、どうしちゃったんだろう?


やっぱり、何も感じない。



「わかった……」



取り敢えずそう返事をして、私はシャワーを浴びた後着替えるために、新しい制服をクローゼットから取り出そうと立ち上がった。
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