幼なじみとナイショの恋。
今も、ガラガラの座席に古賀さんと二人、人一人分のスペースをあけて座れるくらいにはすいていて、斜め前の座席には2歳くらいの子供を連れた家族が、和やかに会話を楽しんでいた。
この電車の、このほのぼのした感じが好きなんだよなぁ。
なんて、自然と頬が綻ぶのを止められずにいれば「ねぇ」と呼ばれ、慌てて古賀さんに視線を戻した。
古賀さんは、どこか心ここに在らずといった様子で斜め向かいの家族を見ている。
「あんたはさ、未来がわかる能力が欲しいって思ったこと、ない?」
「未来がわかる能力……?」
「そう。例えば、1年後、5年後、10年後。自分がどうなっていて、誰と一緒にいるかわかるの」
未来がわかる能力。
私は古賀さんのように欲しいと思ったことは特になかったように思う。
それは恐らく、未来に希望をもったことなんて一度もないから。
私の未来は、“はるくんがいない”ということが大前提だったから。
はるくんのいない未来のことなんて、考えたくもなかった。
「……古賀さんは、あるの?」
「ある。……違うな。正しくは、“あった”か」
あ。
また、この顔だ。
いつも、迷いがなく、真っ直ぐな古賀さんの瞳にチラつく暗い影。