幼なじみとナイショの恋。

古賀さんは、どこか遠い昔の記憶を呼び起こすように、そっと目を閉じる。


「だけど、一人だけ……一人だけいたんだ。そんな私なんかの側にいてくれるヤツが……───」




古賀さんの話によると、古賀さんには近所に住む幼なじみがいた。


2つ歳上の男の人で、名前は 優(ゆう)さん。


彼と古賀さんは物心つく前からずっと一緒にいて、家族同然のように育ってきたという。



「私なんかよりも私のことをわかってて、気がつけばいつも隣にいた。嬉しい時も、楽しい時も。苦しい時も、悲しい時も」


「それって……」


「うん。あんたにとっての尾上と似てるね」



私の心を読み取ったかのようにそう言う古賀さん。


古賀さんにも、そんな人が……?



「尾上みたいに男臭いタイプではなかったけど、優しくて、穏やかで、真っ直ぐで。本当は気が弱いくせに、何かあればいつも私の前に立って守ってくれた」


もしかして、古賀さんは……。



「……古賀さんは、その人を好きだったの?」



私にとって、はるくんがそうであるように古賀さんも……?



「……好きだったよ。気づいた時には、どうしようもないくらい」



やっぱり……。


じゃあ、古賀さんがこんな風に強くなれたのは、彼が側にいてくれたからなのだろうか。


でも、ならどうして?


どうして古賀さんは、そんなに悲しそうな顔をしているの?
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