幼なじみとナイショの恋。
そんなはるくんを呼び止める勇気なんて、私にはもうなくて、ただその場に佇むことしかできない。
もう……遅かったのかもしれない。
きっとはるくんは、もうとっくに切り替えてしまっているんだ。
はるくんが側にいないことが苦しくて、立ち止まったまま動き出せないでいる私とは違い、私が隣にいない未来をはるくんは着々と進んでいっている。
はるくんは強い人だから、私なんかが一人いなくなったところで、きっと大した問題じゃないのだろう。
……ダメだね。
こんな、今さらはるくんの優しさが恋しいだなんて、勝手にもほどがあるよね。
突き放したのは私なのにね。
───“何があっても、俺が結衣を離さないから”
そう言ってくれた、はるくんの温もりが恋しい。
私を見る、優しい瞳が恋しい。
古賀さんと厚木くんが心配そうに見守る中、私はその場に立ち尽くし、地面を見つめたまま動くことができなかった。
*
あれから、二週間が経とうとしていた。
8月も下旬に突入して、夏休みも残すところあと僅か。
海に、プールに、お祭りに。学生達が夏休みのラストスパートを謳歌する中、私はお母さんとの約束通り、予備校に家庭教師にと忙しい毎日を送っていた。