幼なじみとナイショの恋。

そしてなにより、なんの柵もなく結衣と恋愛できる立場にいるこいつが、俺は羨ましくて仕方なかった。



「あのさ。尾上はもう蒔田さんのことを諦めるんだよね?」


「そう言ってるんだよこいつ!なんとか言ってやってよ八木っち!」



諦める……。


そうだよ。


今はまだ、すぐには消せないかもしれない。


10年もの間、積りに積もった想いをそう簡単に消せるわけがない。


だけど、いつか。


きっといつか。


結衣との10年間も、結衣への想いも全て、思い出にできる日がくるはずだ。


くる……はずなんだ。



「じゃあ、俺が蒔田さんをもらっても問題ないってことだよね?」



翔吾が、パスタを食べようと持ったフォークを手から滑らせる。


かくいう俺も、八木のその言葉に一瞬心臓が止まったかと思った。



「……は?」


「だってそういうことでしょ?蒔田さん、一生一人ってわけにもいかないんだし、尾上が諦めるってことはいつか誰かのものになるんだから、別に俺だっていいわけでしょ?」


「や、やややや八木!お前、本気か!?」



八木の隣でアワアワと慌て出す翔吾とは対照的に、八木は落ち着いた様子。


俺の真意を窺うように、じっと俺の目を見つめてくる。
< 274 / 341 >

この作品をシェア

pagetop