幼なじみとナイショの恋。
そしてなにより、なんの柵もなく結衣と恋愛できる立場にいるこいつが、俺は羨ましくて仕方なかった。
「あのさ。尾上はもう蒔田さんのことを諦めるんだよね?」
「そう言ってるんだよこいつ!なんとか言ってやってよ八木っち!」
諦める……。
そうだよ。
今はまだ、すぐには消せないかもしれない。
10年もの間、積りに積もった想いをそう簡単に消せるわけがない。
だけど、いつか。
きっといつか。
結衣との10年間も、結衣への想いも全て、思い出にできる日がくるはずだ。
くる……はずなんだ。
「じゃあ、俺が蒔田さんをもらっても問題ないってことだよね?」
翔吾が、パスタを食べようと持ったフォークを手から滑らせる。
かくいう俺も、八木のその言葉に一瞬心臓が止まったかと思った。
「……は?」
「だってそういうことでしょ?蒔田さん、一生一人ってわけにもいかないんだし、尾上が諦めるってことはいつか誰かのものになるんだから、別に俺だっていいわけでしょ?」
「や、やややや八木!お前、本気か!?」
八木の隣でアワアワと慌て出す翔吾とは対照的に、八木は落ち着いた様子。
俺の真意を窺うように、じっと俺の目を見つめてくる。