幼なじみとナイショの恋。
だって、俺の存在は結衣を傷つけるばかりで、何もしてやれない。
こんなに好きなのに、何もしてやれない。
「……どうしろっていうんだよ……」
思わずそう呟いた時だ。
「新しい恋をするってのはどうかな?」
翔吾のものでも、八木のものでもない声が落ちてきて、声の下方へと顔を向ける、
そこにはよく見慣れた顔が立っていた。
「やっほー!悩める部員達!お疲れ!」
「一ノ瀬先輩!」
二カッと笑いながら俺達を見下ろしていたのは、俺達が所属するバスケ部のマネージャーの一ノ瀬先輩。
「お疲れっス!先輩、こんなとこで何してるんすか?」
「そこの席で勉強してたら、君達が入ってくるのが見えてさ」
「あ!そっか!一ノ瀬先輩受験生ですもんね!」
「まーねー!」
「家よりもここのが勉強が捗るんだよね!」と言ってはにかむ先輩は、部活の練習が終わってすぐにここに来たという。
翔吾と話していた一ノ瀬先輩の視線が、今度は俺を捉えた。
「てか何!はる、失恋したんだ?」
「……立ち聞きとか、悪趣味ですよ」
「あはは!ごめんね?聞こえてきちゃってさ!部員じゃない子も一緒にいるとこ悪いけど、私も一緒にいい?」
それから俺達は、一時間くらい他愛もない会話で盛り上がった。
といっても、俺は翔吾と八木と一ノ瀬先輩の会話を聞いていただけで、その間も結衣のことで頭がいっぱいだった。
新しい恋……か。