幼なじみとナイショの恋。

自嘲気味に笑うはるくんのお母さんの言葉に、私は大きく頭を振る。



「そうでは、ないと思います」


「え?」


「お母さんが、本当にどう思っているかは私にもわからないけれど、お母さんがこの街に引っ越してくる前、私に言ったんです。“これから引っ越す街は、また絶対に住みたいと思っていた街”だって」



あの言葉の真意は、わからないけれど……。



「はるくんのお母さんとの思い出が詰まった街だから、そう言ったんじゃないでしょうか。本当は、お母さんも心のどこかでは、はるくんのお母さんに会いたいって思っていたんだと私は思うんです」



はるくんと離れる決意をした時に思ったの。


例え離れたって、想いを消そうとしたって、はるくんと過した10年間の思い出はどうやったって消すことができなかった。


離れようとすればするほど、かけがえのないものになっていく。


本当はお母さんも、ずっと後悔していたんだよね?


あの日、はるくんのお母さんを突き放してしまったことを。



はるくんのお母さんは一度大きく目を見開くと、「……そうだといいな」と言って憂いの帯びた表情で笑った。










夕食が食べ終わると、はるくんのお母さんは近所の人に呼ばれて「ごめんね!ちょっとだけ出てくる!」と言って家を出ていった。
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