みんとキャンディ
「聖梨っ」




突然かけられた声に、携帯電話の画面を眺めていた聖梨は慌てて顔を上げた。




「雄楽くんっ。……お疲れ様!」




駆け寄った制服姿の雄楽に、



聖梨はこう言って笑いかけた。




「待ち合わせは?」



朝から気になって仕方なかった聖梨の紹介デート。



お昼も過ぎた中途半端な時間にも関わらず、ぼんやり突っ立っていた聖梨に、雄楽が尋ねる。



今から、



なんて答えが返ってこないことを期待した雄楽は、




困ったように笑って首を振る聖梨に、




不謹慎にも内心で安心していた。




「用事があるってドタキャンされちゃって~」




なんて言いながら笑う聖梨の手を取り、



驚く聖梨を無視して雄楽は、ドンドン足を進めていった。






聖梨にこんな顔をさせるような男、聖梨に相応しいわけがない。




聖梨の魅力がわかるのは自分だけでいい。



そんな気持ちだけが、雄楽を突き動かしていた。
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