イジワル専務の極上な愛し方
「あ、ありがとうございます……」

心の内が見透かされたようで、恥ずかしい。それなら自分の分は、自分で払おうと財布を取り出すと、横目でそれを見た専務がムッとした表情になった。

「いいって言っているだろう? 田辺さんの歓迎会もしていないから、その代わり」

支払いを終えた専務は、足早にお店を出る。私は遅れまいと、あとを追いかけた。

「本当にいいんですか? すみません。ありがとうございます」

歓迎会といっても、普段は専務や取引先の方以外と接する機会は少ない。まさか、専務と二人で……というわけでもないだろうし、今のは気を遣ってくれたのかな……。

専務の好意は素直に受け取り、財布を鞄にしまった。

「なあ、田辺さん」

パーキングに停めてある車に向かいながら、ふと専務に声をかけられた。

「はい、なんでしょうか?」

取引先へ向かうときは、車は会社から出してもらえる。専用の運転手がついているのは、万が一の事故等があったときでも、車を降りて取引先へ行けれるから。

だから今日も、社用車を使っていた。

「今度、一緒に晩ご飯でも食べにいく?」

「えっ!? 突然、なにを言われるんですか?」

てっきり、会議のこととかを聞かれるのかと思っていたのに、食事のお誘い……? 怪訝な顔で専務を見ると、彼にクックと笑われた。

「そんなに嫌そうな顔をしなくてもいいだろう? 田辺さんって、不思議な人だな。ラッキーとか、思わないわけ?」

「思いませんよ。それより、夕方からの会議について、ご連絡事項がありますので」

呆れかえりながら、歩みを進める。さっきは、専務の気遣いを垣間見れたようで、少し嬉しかったのに。

車には、運転手さんが戻ってきていて、私たちに気づいて後部ドアを開けてくれた。

「はいはい、分かったよ。じゃあ、連絡事項を聞こうか」

後部座席に乗った専務は、腕を組んで私を恨めしげに見た。
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