イジワル専務の極上な愛し方
そう言って、彼は私を優しく抱きしめた。翔太さんの胸の温もりに、自然と顔を埋めていく。

「でも、やっぱり……今もいい匂いがします……」

「それは彩奈も一緒。今夜は、このまま寝る? それとも、抱いていい?」

「えっ? えっと……」

ストレートに聞かれたら、どう答えていいか分からなくなる。

とても、とても緊張する……。だけど、イヤなら最初からここへは来ていない。

と思っていても、それを口にするのが恥ずかしかった……。

「イヤって言わないってことは、いいってこと? そう思うよ?」

翔太さんの静かな口調に、私は小さく頷いた。

「彩奈、俺を見て」

俯き加減の私に、彼の優しい声がかかる。ゆっくり顔を上げると、唇が重なった。

「ん……」

濃厚なキスに、頭がクラクラする。一気に唇が濡れていき、彼の背中に手を回した。

そうでもしないと、立っていられないから……。すると翔太さんは、私を軽々と抱き上げた。

「しょ、翔太さん」

こんな風に、抱きかかえられたのなんて初めて。恥ずかしさを隠せない私に、彼は優しく微笑んだ。

「お前、軽いな。小柄だし、強く抱きしめたら折れそう……」

「翔太さんは……、逞しいですよね。抱きしめられたら、なんだか安心します」

今夜は、彼の魔法にかかっちゃったのかな……。私が、こんな大胆なことを言うなんて。

「じゃあ、今夜はずっと安心していてもらおうかな」

そう言った翔太さんは、もう一度私の唇を塞いだ。
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