春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
紗羅さんは私が記憶喪失だと言った。
確かに私は半年前のことをよく覚えていないが、それは恐怖のあまりに忘れているのだと思っていた。
だが、どうやらそれは違ったようだ。
紗羅さんが私に抱いている感情、私にぶつけた言葉。
いつの間にか怖くなっていた姉のこと。
そして、あの琥珀色の瞳の人。
恐らく、それらは全て、失われた記憶と関係している。
半年前に起きた事故で抜け落ちた記憶の中にあるのだ。
「(りと、)」
瞳を閉じた彼に、音のない言葉を掛ける。
その瞬間、りとは目を開けた。
聞こえたよ、とでも言うかのように、口角を上げている。
「(たぶん、全部関係があるんだと思う。私が忘れている“何か”は、紗羅さんや神苑、お姉ちゃんのことに、関係してる)」
「………」
私は身を乗り出して、唇を動かした。
「(私、知りたい)」
「…なんで?」
間髪入れずに返ってきた声は、ほんのり冷たい。
確かに私は半年前のことをよく覚えていないが、それは恐怖のあまりに忘れているのだと思っていた。
だが、どうやらそれは違ったようだ。
紗羅さんが私に抱いている感情、私にぶつけた言葉。
いつの間にか怖くなっていた姉のこと。
そして、あの琥珀色の瞳の人。
恐らく、それらは全て、失われた記憶と関係している。
半年前に起きた事故で抜け落ちた記憶の中にあるのだ。
「(りと、)」
瞳を閉じた彼に、音のない言葉を掛ける。
その瞬間、りとは目を開けた。
聞こえたよ、とでも言うかのように、口角を上げている。
「(たぶん、全部関係があるんだと思う。私が忘れている“何か”は、紗羅さんや神苑、お姉ちゃんのことに、関係してる)」
「………」
私は身を乗り出して、唇を動かした。
「(私、知りたい)」
「…なんで?」
間髪入れずに返ってきた声は、ほんのり冷たい。