ヒロインの条件
記憶を手繰り寄せ、お兄ちゃんとその友達を思い出そうとした。制服の白ワイシャツに、黒いズボン。お兄ちゃんの友達とあって、みんなちょっと派手で軽そうだから、私、敬遠してたんだ、そういえば。
「ほら、これ」
お兄ちゃんが私にモニタを向けた。
そこには黒い詰襟を着た学生たちが数人写っていた。右端にお兄ちゃん、その隣に。
「あ」
私は口を開ける。この間みたいな黒縁の眼鏡をかけ、髪を茶色に染めた若い佐伯さんが立っていた。進学校だけあって、皆頭が良さそうだけれど、どこか人を小馬鹿にしたような生意気さがにじむ。
ぶわーっと喜びが湧いてきて、私は叫び出しそうになった。
いた、ここに。見つけたーっ。
「一時期、うちにしょっちゅういたよ。高2か、高3か。まあ、俺の部屋からあんまでなかったけどなあ。あのころひどく荒れてて、大学にもいかないって言ってたんだけど、ある日突然『大学行く』って言い出して、あっという間に海外の大学に行ったんだ」
写真を見れば確かに、私が中学三年のころ、家に入り浸っていたうちの一人だという気がする。写真と記憶が融合して、だんだんと私の中の『塩見日向』さんが形を成していく。
そうだ、いた。たまに家の廊下ですれ違った。私が嫌いなお兄ちゃんと同じタイプの男の人だなあって。そうそう、私の柔道の大会にもお兄ちゃんと来てたっけ。女の子たちがキャーキャー言ってて、私は神聖な場所が荒らされる気がして気分が悪かった。
思い出してきた。