ヒロインの条件
社員が続々と出社してきたので、私は伝票を入力しながら、また佐伯さんのことを思い出そうとした。
同じ高校に通っていないのなら、どこで会う可能性があるだろう。そこでふと、27歳という年齢がお兄ちゃんと同じだと思い至った。
お兄ちゃんの友達は、よく家に遊びにきてたけど、その中にいたとか? 黒い学ランの一団の中にあの顔がいたか思い出そうとしたが、まったく思い出せない。あとでお兄ちゃんに、嫌だけど連絡してみるか。
私はお兄ちゃんの顔を思い出して、はあと一つため息をついた。お兄ちゃんはいわゆる高スペック男子だ。軟弱だったので柔道の才能はなかったが、そのかわり勉強はダントツで、名門の中高一貫校に入学したあと東大にストレート合格。そのくせ、身長が高くイケメンなのだ。話をしてるだけで、ダメだしされている気分になるから、なるべくだったら話したくない。
でも、お兄ちゃんの友達だったら、マサチューセッツもあり得るかも。
そう考えたら、絶対そうだという気分になってきて、案外簡単に思い出せたな、なんて思ってニヤニヤしてしまった。