隠れ蓑〜偽り恋人・真実の愛〜
「光さんっ!今日はお迎えはお断りした筈です!!なのにどうしてっ、、、!」
悲痛な声を上げると、背後から莉子ちゃんの声がした。
「柿本さんを責めないで。私が連絡したんだから。朝からあんなに騒ぎになったんだから私の耳に入らないわけ無いでしょ?晶帆の性格上、逃げ出すのが目に見えてたから早めに来ておいてもらったの。だって当事者も呼んでおかないとフェアじゃないでしょ。それにあくまでも晶帆の〝ホンモノの婚約者〟なんだから。その証拠にちゃんと左手の薬指に指輪してるじゃない。」
莉子ちゃんの言葉に途端に背後から近づいていた革靴の音が速くなる。
あっという間に真後ろに彼の気配を感じて身体が硬直する。
「、、そういう事か。じゃあ尚更、退職は認められない。」
そういうと左手を背後から捕まれ、素早く指輪を抜き取られた。
そしてそれをロビーのタイルに投げ捨てる。
指輪が叩きつけられる金属特有な高い音が静かなロビーに響く。
その音が耳に冷たく響いて、我慢していた涙がこぼれ落ちた。