突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「よく言った、日菜子! さぁ、急いで準備に取り掛かれ。結納の儀まで、もうそれほど時間はないぞ」
「えっ!? ちょ、ちょっと!」
祖父のひと声で、周りにいた皆が散るように慌ただしく動き出す。私は、姉のために呼んでいたヘアメイクアーティストの女性に手を引かれ、床の間の前に置かれた鏡の前へと座らされた。
あまりの速やかさに思考がついていけず、やはり早まったかもしれないなんて思いながらも、前言撤回なんてとてもじゃないが言える状況ではない。そんな中、惚けてその場に立ち尽くしている様子の真紘の姿が鏡越しに見えた。思わず振り返る。
「真紘……?」
いつもは誰よりもキビキビと働いている彼が、ぼーっとしているなんて珍しい。呼びかけも聞こえていないみたいだ。
「すみません、日菜子様。お顔をこちらへ」
「あ、すみません……」
女性に言われ、鏡へ向き直る。髪に櫛(くし)を入れられながら、大きく肩を落とした。
生まれて此方(このかた)二十五年、突然政略結婚をする羽目になるなら、素敵な恋愛のひとつでもしておけば良かった。
それなのに結婚なんて。立花さん、いったいどんな人なんだろう……。
「えっ!? ちょ、ちょっと!」
祖父のひと声で、周りにいた皆が散るように慌ただしく動き出す。私は、姉のために呼んでいたヘアメイクアーティストの女性に手を引かれ、床の間の前に置かれた鏡の前へと座らされた。
あまりの速やかさに思考がついていけず、やはり早まったかもしれないなんて思いながらも、前言撤回なんてとてもじゃないが言える状況ではない。そんな中、惚けてその場に立ち尽くしている様子の真紘の姿が鏡越しに見えた。思わず振り返る。
「真紘……?」
いつもは誰よりもキビキビと働いている彼が、ぼーっとしているなんて珍しい。呼びかけも聞こえていないみたいだ。
「すみません、日菜子様。お顔をこちらへ」
「あ、すみません……」
女性に言われ、鏡へ向き直る。髪に櫛(くし)を入れられながら、大きく肩を落とした。
生まれて此方(このかた)二十五年、突然政略結婚をする羽目になるなら、素敵な恋愛のひとつでもしておけば良かった。
それなのに結婚なんて。立花さん、いったいどんな人なんだろう……。