突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「謝罪なんていいから、早く済まそう。こんなことしてる暇があったら、さっさと出社して仕事でもしている方がずっと有益だ」

 不機嫌丸出しのそれは、間違いなく私の頭上から降り注いでいた。勢い良く頭を上げる。先ほどまでの笑顔はどこへやら。彼の顔には、露骨に不快の色が浮かんでいた。

 ――なに、この人……。

 呆気に取られて、二の句が継げなくなる。

 そりゃこんなことになったのはうちのせいだし、それに関しては申し訳ないと思ってるけど、私だって今日突然結婚しろって言われてここに立ってるのに、仮にも結婚相手にその言い方はないんじゃないの? 私の前じゃ、仮面すら被らないってわけね!

「ちょっと待って」

 奥座敷へ向かおうとしていた彼の羽織りを掴む。

「なんだ?」

 彼は、こちらを見ずに答えた。

「あなたは、私と姉、どうしてどっちでも一緒だって思うんですか?」

 政略結婚なら相手が誰であっても同じというのは私にもわかる。でも、一応この男の考えを聞いておきたい。それで私も、今後の覚悟を決められるってものだ。

 斜め後ろから見上げ、答えを待つ。

「どっちも好きにならないんだから、同じだろ」

 そう言われるのをわかっていた気もするが、唖然とした。

 好きにならない。私は、この先愛されないとわかっていて、この男と結婚しないといけないの? ……人生地獄行きだ。
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