突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「会社のために、どうしてそこまでできるんですか?」

「俺の人生は、立花のためにある。それにさっきも言ったが、結婚相手なんて大した問題じゃない」

「私には、とても大切なことです」

「なんだ、恋人でも居るのか?」

 顔だけをこちらに向けた彼が、からかうように片方の口角だけをつり上げる。

「……それは、居ませんけど」

「だろうな。そのちんちくりんじゃな」

「なっ!?  最っ低……!」

 身をよじり、自分自身を抱き締めた。彼はフンッと鼻で笑っている。開いた口が塞がらなかった。

「安心しろ。俺は、ちんちくりんに興味はない」

 馬鹿にしたように吐き捨てられる。力が抜けて、羽織りを掴んでいた手は落ちた。彼は、振り返ることなく行ってしまう。ひとりその場に突っ立って、その背中が小さくなっていくのを眺める。

 信じられない……。なんて男なの!?

 じわじわと怒りが湧き上がってくるのを感じた。

 馬鹿にして! なにがちんちくりんよ! 皆にあの真っ黒の正体をバラして、絶対に破談にしてやるんだから! お姉ちゃんがうっかり結婚しないで本当に良かったわ!

 思い出せば、地団駄を踏みたくなる。足取り荒く、彼のあとを追った。
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