突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「いや、いいだろう。俺とお前の根比べだ。おかしな噂なんて立てられたらそれこそ色んな方面に影響が出る。夫婦のフリをしながら、いったいどっちが最後まで落ちずにいられるだろうな」

 彼はふんぞり返り、鼻を鳴らした。

「私よ」

「さぁ、どうかな。じゃあ、俺が負けたら、なんでもいいからなにかひとつ、お前のいうことを聞いてやる」

「なんでも……?」

 心の中に、一点の明かりが点じられる。

「あぁ。婚約を解消してやってもいいぞ。もちろん、会社の業務提携の話はそのままでな」

「本当!? でも、そんなこと……」

 いくらこの人が言ったからって、おじいちゃんたちが納得してくれるわけがない。そう思い、深く頭を垂らした。

「約束する」

 真剣な声が降ってきて、思わず顔を上げる。そのひたむきな表情に、胸がドキリと音を立てた。伏せていた目がこちらに向けられ、視線がぶつかる。

「でも、お前が俺に降伏したら、そのときはお前もひとつ、俺のいうことを聞けよ」

 言い終えると、彼はまたしても口角を歪めた。

「……いいわ! 必ず守ってよね」

 信用していいのかわからない。でも、今の私には、この子供じみた提案でしかこの袋小路(ふくろこうじ)から抜け出す手立てはない。こうなれば、行くところまで行ってやる。この男に、飼い犬に手を噛まれる気持ちを嫌っていうほど味合わせてあげるわ!
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