突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
立花家を見送り、ようやく振袖を脱いだ私は、自室に敷いてもらった布団へとダイブした。
「あー、部屋着落ち着く~」
枕に頬を寄せ、瞼を落とす。緊張の糸が切れたのだろうか、突然ひどい睡魔に襲われた。
あんなことがあったのに、私ってこんなに図太かったんだ……。そう思いながらも、夢とうつつの間をぼんやりとさ迷う。
意識を手放しかけたそのとき、誰かの声が頭の奥で聞こえた。接着剤でくっついたように重い瞼をなんとか持ち上げ、「はい」と答える。
「日菜子、俺」
襖(ふすま)の向こうから、特徴的なしゃがれた声がする。真紘だ。
「入っていいよ」
「失礼致します」
誰が聞いても形式だけとわかる棒読みの口調。彼は、布団の上に座り羽織っていたカーディガンを正していた私の目の前で足を止めた。
「どうしたの? 私疲れすぎて、しばらく動けそうにないんだけど」
力なく笑う。すると、彼は難しく眉を顰(しか)めた。
「お前、あのおと……あの人と、結婚するのかよ」
思わずドキッとする。眠気が一気に覚めた。