突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします

 荷物をまとめ、彼が待つ部屋へ戻った。

「入ります」

「あぁ、どうぞ」

 正座をし、中から声が返ってきたのを確認してから襖を開ける。創さんの視線がなぜか私の頭よりもずっと上に向けられていて、つられるように見上げた。

「お茶のおかわりをお持ち致しました」

「あれ、真紘? おかわり、今持ってきたんだ」

「えぇ」

 お茶を乗せたお盆を持った真紘が、よそ行きの言葉遣いで答える。お茶はふたつ用意されていた。

 私の準備ができるのを待っていてくれたのか……。

 さすがの心配りに、ほっと安堵のため息をついた。

「君は、この前の……」

 自身の前におかわりを置く真紘を見て、創さんが顔を強張らせる。

 この前? 結納の儀が行われた日、ふたりが話しているところなんて見なかったと思う。

「使用人の宇賀と申します」

「使用人だったのか。てっきり、いや」

 創さんは口もとに手を添え、考えるように難しい顔つきになる。

 なにかを言いかけてやめたけど、なんだったんだろう。
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