突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「婚約者の懐に飛び込んでなにが悪い」

「形はそうであっても、私とあなたは違うでしょ!?」

「本当に、よく吠える犬だ」

 彼は忌々しそうに言い放った。

 ……ご希望なら、今すぐその腕に噛みついてやろうかしら。

 込み上げてくる怒りを、なんとか堪える。行きとは逆方向に流れていく景色を名残惜しく見つめ、彼に聞こえないほどの息をついた。

 こんなに憂鬱(ゆううつ)なドライブは初めてだ。なんなら、地獄行きと書かれた札を下げて走りたいほど。

 私は窓に頭を預けながら、車が止まるのを待った。
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